零の章

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草木も眠る丑三つ時。 深い森林の中で、一匹の<獣>が長い鮮血の毛を風に揺らめかし乍<ナガラ>枯れ葉の上を歩いていた。 其の<獣>が歩く度、枯れ葉が腐り消えていく。 そして其の<獣>から滴り落ちる真紅の滴は小道を汚していった。 同時刻、岩牢。 其の中には真っ白な着物を着た、<人>が入って居た。 酷く細い其の肢体は今にも折れてしまいそうな程儚く、白かった。 しかし彼の腰辺りまで伸びた細く柔らかそうな髪色は、眩しい程明るくて。 月光に照らされ煌めく其の色は鮮やかな黄金色。 しかし夜を照らす月が雲に隠れてしまうと彼の髪は本来の色に戻ってしまう。 其れでも、美しい色には変わりなく。 白い肢体を飾り付ける髪の色。 其れは暮れる夕日の様な、眩しい程の、鮮やかな橙だった。 草木も眠る丑三つ時…。 合い入れぬ二人が間見えるのは再び月が闇夜を照らす、其の瞬間…………。 .
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