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この部屋は、美術館というよりドラマなんかで見る社長室、と言った感じだ。窓際に大きなデスクがあり、部屋の左右には本棚が並んでいる。
紳士はデスクの前でにこやかな表情で迎えてくれた。
「こんにちは。こちらこそ、今日はありがとうございます。
あの、すごいお屋敷ですね。
案内してくれた人形もすごい出来だし・・・庭もすごいです!」
素直に賛辞を述べた。
紳士は事も無げに笑いながら、
「そうかい?君に楽しく過ごしてもらえそうなら、それは嬉しいね。
こんな山の中まで来るのはさぞ疲れたろう。まぁ、掛けてくれ。」
そんなに疲れても居なかったが、革張りの黒いソファの座り心地が試してみたくて、遠慮なく座った。
もっと体が沈み込むように柔らかいかと思ったが、適度な固さがある。
紳士も向かいのソファに腰をおろした。
「マリア、そこにいるんだろ?お客様にお茶の用意をしなさい!」
マリア、と呼ばれたのは俺を案内してくれたメイドの人形だろう。
ドア越しに命令すると、紳士は俺の方に向き直り、人のいい笑顔を浮かべた。
「君のような青年と知り合えて、本当に良かったよ。
オフ会なんて初めて出たからね。すこし不安だったんだ。」
「いいえ、俺の方こそ。
Jackさんがこんな凄い人だったなんて・・・。」
「おっと、そういえば僕はまだ名前を言っていなかったね。
芹沢 要(セリザワ カナメ)です。どうぞよろしく高峯君。」
「あ、こちらこそ。」
差し出された名刺を受け取る。
名前と・・・電話番号だけ。職業は載っていなかった。
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