カツオ、万引きを知る

7/19

2866人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
中島が店へと入っていった。 …とくに物音はしない。 カツオの良心がうずく。あの駄菓子屋とは長い付き合いなんだ。お店をやってるおばあちゃんはとても優しい人なんだ。 でもどうだ。ガムの一つや二つ。あんなもの、10円以下の価値じゃないか。十円玉一つ放り出してまで噛みたいもんじゃあない。 良心との葛藤に耐えつつカツオは中島の帰還を待つ。 …出て来た。中島が店から出てきた。 「くっくっくっくっ………ふははははは」 中島は必死に笑いをこらえようとしている。しかし顔はにやつき、ひきつっている。 「中島‼うまく…いったのか…?」 「ふっ。朝飯前よ」 そう言い中島はポケットからチロルチョコを取り出した。 2つ。 「やったのか…ついにやったのか…」 チロルチョコ、2つ。 「楽勝だったぜ磯野。これで僕は一人前の男さ」 「くそっ❗僕はまだチロルチョコを万引きしていない❗子供のままだ❗おい中島、僕も男になりたいよ」 「あの店のチロルチョコだから僕は1人で成功したんだ。これを見ろ」 中島は はらまき から一冊のノートを取り出した。 「これは…?」 「必勝法が書かれている極秘文書さ。磯野、君にこれをゆずるよ。早く大人になろうぜ」 「ありがとう中島」 「僕はもう帰るよ。こんなハザード地帯に長居は無用。さぁ磯野、行くんだ」 「…おう」 じゃぁな と言い中島は立ち去った。 チロルチョコはわけてくれなかった。 カツオは渡された一冊のノートの表紙を見た。 黒地に白いペンで何か書かれている。読めない。 ……まさか、デスノート…⁉ カツオは震える手で表紙を開いた。 ∴◎∧∂Θυξξξ 読めない。英語か?じゃなければこれはただの落書きだ。字の書けない子供が落書きをしたノートだ。いったいこれは何なんだ… パラパラとノートをめくっていくと、落書き以外の、読める字が書かれているページに達した。 カツオは舌打ちした。 「ちっ。そうゆうことか」 ノートの最後にはこう書かれていた。 ばぁぶぅ
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2866人が本棚に入れています
本棚に追加