ミズキ

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DVDが再生される。 タイトルロゴ。メニュー画面。 ハンディカムカメラで映し出される町並み。 行き交う通行人達の顔にはぼかしが入れられている。 その中で鮮明に映し出される一人の少女。 今日の主人公の登場だ。 クタクタになったワイシャツを畳みながら、石島は画面を見る。 足元だけが映される。お決まりの演出。カメラは徐々に足から上半身までを映しだし、彼女の首の辺りで止まる。 男の声。 「あの、ミズキちゃん?ですか?」 「あ、はい。え、カメラ?」 これもお決まりの演出。 必死に撮影の許可をとる男。 「いや、俺、カメラが趣味でさ…。」 「俺以外には誰も見せないからさー。」 「ほら、やっぱり、記念にさ。映像に残しとかないと忘れちゃうじゃん?」 「ネットに流すとか、絶対にしないし!ねっ!」 はい、はい。分かってる。石島は見慣れた光景に少し萎えた気持ちになる。 裏返しになった靴下を表返しながら、石島は独り言を呟く。 早く顔を見せろよ。 「分かりました…。うん。誰にも見せないんだったら…。」 承諾する女。 カメラが上へと動き、彼女の顔が映し出される。
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