7人が本棚に入れています
本棚に追加
DVDが再生される。
タイトルロゴ。メニュー画面。
ハンディカムカメラで映し出される町並み。
行き交う通行人達の顔にはぼかしが入れられている。
その中で鮮明に映し出される一人の少女。
今日の主人公の登場だ。
クタクタになったワイシャツを畳みながら、石島は画面を見る。
足元だけが映される。お決まりの演出。カメラは徐々に足から上半身までを映しだし、彼女の首の辺りで止まる。
男の声。
「あの、ミズキちゃん?ですか?」
「あ、はい。え、カメラ?」
これもお決まりの演出。
必死に撮影の許可をとる男。
「いや、俺、カメラが趣味でさ…。」
「俺以外には誰も見せないからさー。」
「ほら、やっぱり、記念にさ。映像に残しとかないと忘れちゃうじゃん?」
「ネットに流すとか、絶対にしないし!ねっ!」
はい、はい。分かってる。石島は見慣れた光景に少し萎えた気持ちになる。
裏返しになった靴下を表返しながら、石島は独り言を呟く。
早く顔を見せろよ。
「分かりました…。うん。誰にも見せないんだったら…。」
承諾する女。
カメラが上へと動き、彼女の顔が映し出される。
最初のコメントを投稿しよう!