―文子― 序

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首筋に、冷たい感触がした。 次の瞬間、私は呼吸の自由を奪われていた。 首を締められている事に気付くのには、ちょっと時間がかかった。 冷たい感触は黒い革手袋が触れた感触。 後ろから首を締められているから、誰が私の首を締めているのかは分からなかった。 でも、多分、男の人。 耳元に荒々しい吐息が聞こえる。女の人の吐息じゃない。 私は必死に逃げようとした。でも、駄目。 黒い手は、とっても強い力で私の首を締めてくる。 私も両手でその手を解こうと、必死に手袋を掴む。 でも、もがけばもがく程に強い力で締め付けられる。 逆に私は段々と抵抗する力を奪われていく。 息が…苦…しい。 頭が…い…た…い…。 あー、でも、もう、何にも感じなくなってきた……。 頭がぼーっとして… あれ、この吐息………、何処かで……。 そして、私は死んだ。
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