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#01:夕立
俺は何者かの蹴りによって、背中から家の外壁に叩き付けられた。
……何故だ?
何故自分はこんなことになっている?
今日は仲の良い崇城と藍川と、ゲームソフト予約して……
それで家に着いて……
犬の餌をやって……。
俺の手には鉄パイプ。そして眼前には、腐敗した肉と皮膚、そして醜悪な臭いの塊……。
そいつは辛うじて人型を保ち、そして、何かの欲求によって突き動かされているような……。
その欲求は……食欲だろう……。
自分の顔面を強烈に蹴られ、額が切れる。そこから流れた血が、目に入り、視力を一時的に奪う。
……一時的? いや、次は目が覚めないだろう。
この血の目隠しは、恐怖心を消してくれた。明らかに脊椎を痛め、感覚すら無い状態と共に、最期を冷静なままで居させてくれた。
しばらくすると、何かを食べる音が、唯一残った聴覚に入ってきた。
夏の夕立に混じり、咀嚼音が聞こえる。
それは間違い無く俺の体の一部で、もう命が絶える生物の体。
死に際なんて、16年間考えることは良くあったが、どうせ畳の上で死ぬだろうと思っていた。もしくはフローリング。
こんな結末は自殺志願者には丁度良いかもしれない。自分はそう思って消えかけていた意識を閉じた。
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