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その日から奈良山には毎日先生のところにいって、アシスタントさんのフォローをさせた
リカさんの穴を埋めなきゃいけない
先生は気丈にも決してリカさんと旦那さんの事は言わなかったらしい
締め切りが近づいた時だった生理前でもなんでもない…先生がバスルームに鍵をかけ出てこなかった。泣き声だけが聞こえてくると、奈良山から連絡があった
私が駆け付けると三人はバスルームでただ立ちすくんでいる
『まだ鍵かけてる?』
『はい…』と奈良山は落ち込んだ声で答えた
『先生…立木です。どうしたんですか?私には話し聞かせてくださいよ。私だけ入れてくれますよね?』
『……』
私は三人に仕事場で待っててと言った
そのうちカチャリてドアが開いた
広い洗面所があり、広いバスルーム
猫脚のバスタブに先生はいた。長い髪を後ろに束ねてピンクのシュシュをつけていた
『旦那さんからのプレゼントでしたっけ?』
『うん…去年のクリスマスプレゼント』
『思い出しました?いろいろ…』
『そうじゃなくて、これくれた時、主人は彼女と付き合ってたんだなって。だからこのシュシュは彼女のプレゼントのついでなんだと思ってたの。悔しくて、恥ずかしくて、仕事してたら泣けてきた』
『我慢しすぎです。まあ私達がさせてるんですけど…誰もいない時は泣いておかないと…私は一時期、プレッシャーに負けて自殺したんです。幸い友達と部下が助けてくれました
先生一人じゃないんだから、悪口とかも言いたいだけ言えばいいんです!我慢なんて心に悪いですよ
さあ、出ましょう。私タコ焼き買ってきたからみんなで食べましょう』
先生はゆっくりたちあがると、バスルームをでた
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