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ある日うちの編集室に新人が入って来た
どうやら徳永の親父が廃刊になった雑誌の人間を一人引き受けたらしい
男性ファッション雑誌の人でうちではあまり、使えそうにない…
親父いわく『男性目線もこれから必要だろ?』とのこと。確かに親父の言う事はもっとも
でも私は知ってるんだ。廃刊した編集長に仕事場あてがってほしい、と接待うけたこと…
奈良山大河(ならやまたいが)28歳
編集部二人目の男になった。女性陣の目つきは変わった…奈良山は今風の髪型にファッション(私はソフトホストと呼んでる)、物腰も柔らかく、非常に気がきく男であるからだ…
ところが編集になると全くのダメ男でレイアウト下手くそ、記事も作文並…使えるのはカメラくらいだ…あと雑用である
親父もハズレつかまされたもんだ
私はため息をつきながらあるところに向かう
そこは都心の真ん中のオシャレなマンションの最上階
地下にはプールやフィットネスクラブまである
私は仕事のやりかけをある部屋に持ってきた
うさぎ乃先手が、今度連載する内容の専門資料だ
今度は美容師のラブコメらしく、使用されるハサミやクシなどの専門道具のカタログを集めてきた
ノートパソコンにそれをまとめながら打ち込む
『人ん家仕事場がわりにすんなよ…』
『いいじゃない。友達なんだから』
『なんだよ…それ終わったら飯くらい食わせろよ?』
『わかってるわよ。だから材料も買ってきてるんでしょ』
彼は安藤和巳 33歳
私の中学からの同級生。もう幼なじみも同然で大学まで同じだった
しかも…今私が働いているビルの中には彼のクリニックが入ってる
彼は内科医でもあり、歯科医でもある
すでに跡を継いで安藤クリニックの院長でもある
私は仕事を終え、パスタを作った。今はトマトが旬だから、トマトとモッツァレラチーズのパスタだ
『さすが純子だ。ワインにあうな』
和巳は無邪気にパスタを口に運ぶ
なんだか…なんだか…すごく悲しくなる
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