「死ね」

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たった一言、これが神からの啓示だった。 それが現実のものとなった今、多くの人間が経験するという過去の回想シーンを脳髄の芯から感じていた。 狭い空間にひしめき合う、人ごみの中にいる様な感覚にボクは駆られていた。 勤勉ぶった人間味の無い両親。 帰宅は五時ジャストをモットーとするお気楽教師。 そして何より、自分を虐げてきたイジメっ子たち。 これは彼らから受けた凄惨な仕打ちの想起であり、まさに悪夢に他ならなかった。 肌は触れ合っていても、周りとの距離感を異様に遠く感じていた。 ドーナツの真ん中にポツンと残されたような孤独感。 結局、全てが最後までボクを気遣ってはくれなかった。 誰一人として…… 「ふざけるぁ!!!!」 その声は真実の具現化であった。 ボクの叫びとともに環の型をした牙城がだらしなく崩壊した。 ボクは世界に反旗を翻したのだ。 狭かった空間が驚く程の速さで広がりを見せた。 天と地の隔たりが無限になり、そこに長い螺旋階段が敷かれた。 ボクはそれをゆっくり下っていた。 「ドン」 、と鈍い音の後に自分がそこから真っ逆様に堕ちているのに気付いたのは、イジメっ子たちの残酷な笑い声を聞いた時だった。 ボクは吸い込まれるように闇に消えていった……
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