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「ん?」
自動ドアよろしく(勢いは全くよろしくしてないが)勝手に開いたと思われたドアから、大男がのっそりと現れた。
あえなく尻餅ついていた僕は、見上げるとやはりその男は天谷宗一郎その人。
「なんだ叶じゃないか、どうしたんだ?」
「あ、うん、おはよう……。今日は道場じゃないんだね」
「あぁ、今日は完全休養日だ。たまには体を動かさないことも重要ってことだ」
前に聞いたことがある。なんでも、動かないことで全身に酸素をしっかり行き渡らせ、次からのトレーニングを効率的なものにするとかなんとか。うんうんと満足げに頷いている辺り、酸素は宗一郎の屈強な全身に余すところ無く無事に行き渡っているらしい、のだろうか。
その折り、宗一郎の視線が一点で止まり、目が丸くなった。僕の体がびくりと硬直する。
「おぉ、飛べるのか、それ?」
「……!」
いつもの調子から繰り出された疑問に背筋がぞくりとした。なんて答えるべきか。どこから切り出すべきか。頭の中で用意していた言葉が一瞬で霧散して、ぽかんと開いた口からは空気の塊しか出ていかない。早く、何か、言わないと。
躊躇と混乱の中、翼に変な感触を覚えた。
「うぇ!?」
「おぉ、ふさふさだな」
いつの間にか宗一郎が後ろに回り込んで、僕の翼を握ったり引っ張ったりしていた。かつてない新鮮(奇異)な感触に、さっきとは違う意味でぞくりとした。こちょばいというか、こそばゆいというか、もちょこいッ!
「そ、宗一郎、やめ──っ」
「おぉ、ビクビクしてるぞ。凄いな、これは凄い」
「あははは、駄目だってばそこっ──」
「ここがいいのんかー?」
ご、拷問だこれっ!
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