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「……?」
何やら聞こえてきたのは、子供の泣き声だった。
子供って、泣き出すとまるで世界の終わりかのようなとんでもない大声で泣くんだよね。
それも自己主張の一つらしいし、どうしても構ってあげたくなっちゃうんだけど。
駆け足から更に歩調を早めて、その泣き声の元へ。
ところが、僕の助けは必要なかったみたいだ。
泣いていたのはやはり子供。歳はおそらく……言葉を覚え始めたくらいかな? とにかく盛大に泣いている。
その近くにはお母さんらしき女の人が、泣きじゃくる子供をがんばって宥めていた。
うんうん、親がいるなら、何も赤の他人の僕が詮索することはあるまい。
踵を返そうとした時、その子供が指さしていた方向に思わず視線を流してしまった……。
そして、ギョッとした。
「ボクのふうせぇぇぇぇんうぇぇぇぇぇん」
「……うぇーい」
街に植えられたささやかな憩いの緑、街路樹のてっぺんの辺り。
新緑の季節だもの、木だって鮮やかな緑色の葉を広げている。
その葉の合間から覗く赤い球体が、やけに目立っていた。
風船、あるじゃん……。
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