四譚 変容

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□      夜。今日も綺麗な満月が、雲一つない夜空にぽつんと浮かんでいる。  少し冷ややかな風が吹き付ける。そろそろ夏になる頃だけど、夜はまだ寒い。    そんな中で歩を進める僕の手には、一本の木の枝が握られている。    風船が街路樹に引っかかって泣いていた男の子。  それを予期した昨日の彼女。  あくまで偶然の一致だろう、という見解は変わらないものの、数奇なものは感じざるをえなかった。  という動機にして、木登りして風船を取ってあげた僕だが、これも数奇なことに、降りた際に服に木の枝が引っかかっていたのだ。  いやほんとに、数奇も数奇。数奇最高。    ということで動機が連鎖してしまい、暇だったこともあって昨日の公園に行ってみることにしたのだ。    この件はあくまで、口から出任せで言った彼女の予知が現実に起こってしまった、それだけ。そうに違いない。  僕は気紛れで、彼女がいるかも分からない公園に行ってみる。それだけ。  他意なんてない。  あくまで偶然、そう、偶然なのだ。    ……最近、超常的な現象に何度も見舞われていたせいか、僕はその偶然をやけに意識しすぎているようだった。    公園のジャングルジムの上で、昨日と同じように彼女が座っていることも、偶然に過ぎないはず。
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