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夜。今日も綺麗な満月が、雲一つない夜空にぽつんと浮かんでいる。
少し冷ややかな風が吹き付ける。そろそろ夏になる頃だけど、夜はまだ寒い。
そんな中で歩を進める僕の手には、一本の木の枝が握られている。
風船が街路樹に引っかかって泣いていた男の子。
それを予期した昨日の彼女。
あくまで偶然の一致だろう、という見解は変わらないものの、数奇なものは感じざるをえなかった。
という動機にして、木登りして風船を取ってあげた僕だが、これも数奇なことに、降りた際に服に木の枝が引っかかっていたのだ。
いやほんとに、数奇も数奇。数奇最高。
ということで動機が連鎖してしまい、暇だったこともあって昨日の公園に行ってみることにしたのだ。
この件はあくまで、口から出任せで言った彼女の予知が現実に起こってしまった、それだけ。そうに違いない。
僕は気紛れで、彼女がいるかも分からない公園に行ってみる。それだけ。
他意なんてない。
あくまで偶然、そう、偶然なのだ。
……最近、超常的な現象に何度も見舞われていたせいか、僕はその偶然をやけに意識しすぎているようだった。
公園のジャングルジムの上で、昨日と同じように彼女が座っていることも、偶然に過ぎないはず。
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