一譚 希望の果て

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    「ってわけなんだけどさ」 「…………ふむ」  僕の話を笑うでもなく流すでもなく、やはり宗一郎は真正面から聞いてくれた。  実は、笑って「そんなことあるわけないだろ」と言ってほしかった。  そうすれば、僕は昨日の出来事を思い過ごしだと思って忘れられると思ったんだけど。僕にとって宗一郎とは、そんな親友だった。 「おまえがそこまで真面目なら、冗談じゃないんだろうな」 「……残念なことに、そうなんだろうねぇ」  ふむー、と二人腕組みをして呻る。  もちろん答えが出るわけでもなく、聞こえてきたのは教室のドアをスライドさせる音。 「今はここまで。話は後だ後。ハリアッ」 「う、うん」  たどたどしい英語でHurry Upとか言って宗一郎は正面へ体を直した。僕は頬杖をつき、やはり昨日の出来事について考える。  何度考えても、自分の目で見てしまった事実を覆すのは難しいことだ。でも、認めてしまいそうなその事実はあまりにも現実離れしていて、僕はまた考える。  そんな終わる気配がないループの中で聞こえてきた先生の声には、少しだけいつもとは違う新鮮みがあった。 「今日はいきなりだが転入生を紹介するぞー」  どよめく教室。沸く生徒。  突然のサプライズの中でも、僕と宗一郎だけは顔を見合わせて冷や汗を流していた。  まさか、まさか、まさかだよね。まさかのまさかとか言わないよね? 「しかも二人だぞー」 「う、うそだ…………」  ああ、繋がってしまった。転校生と昨日の二人が、等号で。転入生の容姿が、声が、顔が。頭の中で勝手にイメージされ、肉付けされていく。  この絶妙なタイミングでやってきた転入生。残念なことにフラグを立てすぎた。  もはや昨日出会ったあの二人でないと考える方が不自然なほどに。 「よし、田中太郎君、アレックス・ゴンザレス君、中に入って」 「──アレ?」
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