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ジャングルジムの手前まで来た時のことだった。
「……来たわね」
「うわっ!?」
う、後ろに目、付いてるんですかあなたはっ!
物音立てたつもりはなかったんだけどなぁ。
「例の物もちゃんと持ってるわね」
ここまで彼女は振り返らないまま。
「持ってないよー」とか言ったらどんな反応するんだろう。
そんなことを思っていたのも束の間──
「──っ!?」
「感心、感心」
またも彼女の姿は僕の視界からかき消え、今度は耳元から声が聞こえたのだった。
鼓膜を緩やかに圧する静かで艶めかしい声色に、思わず身震い。
心臓に凄く悪い。
「……人を驚かすのが好きなんだね」
「一過性のマイブームに過ぎないわ」
彼女は後ろ手に組み、二、三歩、ゆるりと僕の前に登場した。
「永遠ってね、思ったより暇なのよ」
「……はぁ」
また永遠、か。まぁいいけどさ。
それより、と僕は手に持ったものを掲げてみせる。
「ほら! 難題クリアだね」
彼女はさも関心がなさそうな手つきで僕の手から小枝を取った。
思いがけず触れたそのたおやかな指の冷たさにちょっとどきりとしたけど、それは次なる"冷たさ"に蹴散らされてしまう。
「果てのない永遠なんて手にはしてみたけど」
そしてその細い指で、僕から受け取った小枝を、何の感慨もなさそうな無表情で折った。
ぺきっ、と。
無味の乾燥した短音が、僕の体温を急激に下げた。
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