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「果てのない永遠なんて手にはしてみたけど」
彼女はもう一度、繰り返した。
「全てが褪せて見えるわ」
その唇以外の何も動かない、まったくの無表情。一切の感情すら伺わせない顔つきで、彼女は言った。
唇から零れたのは現実離れした作られたような──そう、まさにアニメのような台詞だけど、滲み出る彼女の「虚無」が、それを違和感なく現実に投影させていた。
彼女の目は全てが色褪せ果てたモノクロでしか世界を映さないのだろう。そう錯覚してしまうほどに、彼女の言の葉には真実が込められているようだった。
心底つまらなそうに、彼女は言う。
「望めば、全て叶うもの」
「違うよ」
「……え?」
「……え?」
……おろ?
……僕、今、なんか言ったね。
あれ?
なんて言った?
「……違わないわ。遍く在る全ての物体は時間という檻に囚われている。永遠を司るということは、それを解き放つことと同義だもの」
「……」
あっれー、おっかしいな。僕、なんか言った気がするんだけど。
うーむ。
「世を統べる地位も、全てを意のままに出来るほどの財産も、血肉を厭わぬ努力の価値も、恋い焦がれ続けた人の想いも、"永遠"の中に内包されているの」
「うーむ……」
「…………」
おかしい、ついにボケたか。
いやいや、ボケるような何かをした記憶はないぞ。
……もしや、風船救出の際に木から降りた時、頭でも打ったか!
やばい、重大な障害を抱えかねない。こわっ。
明日もこうなら、朝一番に病院に──
「だぁかぁらぁっ!!!!!」
「うわぁっ!?」
──気付けば、耳元でこれでもかと言う大声で叫ばれていた。
思案が霧散し、あらゆる感覚器官の矛先が彼女に奪われ、
「全ての難題をクリアした暁には、あなたの望みを一つ、叶えてあげるわ」
□
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