四譚 変容

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□  例の如く、夜、公園にやってきた。  右手にはヅラ。もさもさしていて凄く気持ち悪い。  ……ちなみにあの後、中年教師がまるでこの世の終わりでも叫んでいるかのような必死の形相でヅラを探していたようである。哀れ。  そうして戦利品を持ち、公園に来たのはいいのだが。  僕は思わず辺りを見渡した。 「……あれ?」  今日も月明かりで仄明るいから、人がいるかどうかは容易に知ることができるはずだった。  しかし、彼女と出会った二日間、最初に彼女が居たジャングルジムの上に、今日は人影がない。  ぐるりと一周。しかしいない。歩き回ってみる。しかしいない。公園内を徘徊してみる。やはり、いない。      まるで登場人物が飛び出てしまった絵画のような雰囲気を、その公園から感じた。  あったもの。あるはずのもの。あると思っていたもの。あって然るべきもの。あるからこそ存在した、その場所。  それが、亡い。      込み上げた喪失感に、僕は虚無らしきものを感じた。。  意図せず月と正対していた僕は、夜空の中心でこれでもかと主張するその黄金色にしかし物足りなさを覚え──     「──どっかぁーん!!」   「うわあぁっ!?」      うわあぁっ!?     「な、なななナニ、人類滅亡!?」   「物騒なことを言わないで頂戴。ずーっとあなたの後ろを着けてたのよ」   「…………」      あぁ。それは予想外だったさ。  だから吃驚仰天と驚天動地を足して二乗したくらいびっくりしたんだよ。     「……一過性のマイブーム?」   「そのとおり」      そうして彼女は、にこやかに笑うのだった。
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