一譚 希望の果て

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     あの時のことを思い出す。  さすがに、性別まで見間違えるほど僕はバカじゃない。目もそこまで悪くない。だとすると、この最悪のタイミングでやってきた転校生とあの二人は別人だということになる。  考えすぎるのは僕の悪い癖だ。宗一郎も隣で苦笑いしていた。  僕はほっと胸をなでおろ──さなかった。  教室に入ってきた二人の「女子」。  ……ちょっとタイム。  頭についた大きな紅いリボン。学生服を身に纏っても、それだけは外さないらしい。巫女装束の面影もそれに見た。  見間違うはずがない流麗な金の髪。どことなくボーイッシュで気さくそうな顔つきは、悪戯っぽい笑みを浮かべて……って。 「偽名!?」  道理で日本とアメリカの代表的な名前の絶妙なコラボだと思った。  というか気付こうよ先生、女子ですよ。その名前はおかしいでしょう。  どこからどうみてもその名前は男の子の代表的名詞ですよ。 「うわぁ……」 「やっぱりあいつらなのか、昨日のって」 「……うん」  二人とも人形のように表情を崩さない。整った顔つきがそのおかげで際だった。  こんな時に言うことじゃないけど、もの凄く可愛い。制服も似合ってる。  お世辞抜きに、美少女二人。僕は思いがけず見とれてしまった。  そんな時だった。  元、紅白の巫女のコスプレの人と、目があった。  崩さずに保っていた人形のような表情に微妙な変化。その澄んだ瞳が僅かに見開かれた気がした。    
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