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「巨万の富」
彼女──輝夜さんは言いながら、指を折った。
「栄誉。地位。ヒト、モノ、ソンザイ。……永遠の命」
折った指が五つを数えた時、それが、彼女が思う「僕の望み」であるのだろうと予想した。
価値としては最後の一つが極上。それ以外であったとしても、おそらく他の誰もが一生かけても得ることの出来ない単位のもの。
だけど僕の考えは以前と変わらず、それらが欲しいとは思わない。……いや、正直な話をするとそりゃ欲しいと思うけど、いざ目の前に差し出されると絶対受け取らないだろう。かと言って、すぐに手に入るような望みなんて、望みじゃない。彼女の難題を解き明かして叶える望みなんてないようなものだ。
でも、ここまで乗った舟なのだから、途中下船は興ざめだ。せめてここまでクリアしたわけだし、最後まで付き合ってやろうと思う。最後の一つだって、お遊びの延長のようなものだろうし。……うん、きっとそうだ。そうに違いない。
恐る恐る、次の言葉を催促した。
「最後の、難題は?」
「霊夢や魔理沙と出会ったあなたなら、もう予想は付いてるんじゃないのかしら」
「……あはは」
いやうん、確かに。予想は付いてたけど同時に全力で否定していたね。
初めて輝夜さんと会った時に感じたあの恐怖からして、おそらくこの人の強さはあのフランドールに匹敵する。
そんな彼女が繰り出す最後の難題。いやはや恐ろしや恐ろしや。
「手加減してくれてもいいよ?」
「それだとラストが盛り上がらないじゃない」
「……だよねぇ」
乗りかかった舟だが、身投げしてでも下船したくなった。
地獄行きの舟になんて、誰が好きこのんで乗るもんか。無駄と知りながら必死に頭の中で逃げる算段を組み立ててる自分に一つためいき。はぁ。
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