四譚 変容

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     曰く、陽気な魔法使い。スペルカードの攻略条件は、もちろん術者を倒すこともそうだが、そのスペルカードに定められた時間を凌ぎきることも含まれているそうな。  つまり、ひたすら逃げ続ければこの難題はクリアということだ。弾幕をくぐり抜けて輝夜さんを倒すよりよっぽど現実的だ。  このワケ分からない弾幕からだって、逃げ切ってやるさ。ずっと嬲られるのなんてご免だから。  そうして、     『痛いっ!』 『うわぁっ!?』 『ぶへっ!』 『ばんなそかなっ!』      被弾回数、途中から数えるのを止めた。  弾はふわふわとした形のない光のようで、実はしっかり堅いし当たると痛い。明日には全身青あざだらけになっていることだろう。  コミカルなようでいて、当の本人は至って真面目。フランドールの時と違って生死に関わるような状況ではないにしろ、なにせとても痛い。  当たることが勝敗を決するとかどうこうの前に、痛いから避けたい。でもそれもかなわない。      まず何よりも、弾が多すぎる。そしてその弾が好き勝手動いているおかげで、ただでさえ状況把握が追いつかないのに回避なんて不可能な領域にある。  何か、何か突破の糸口はないのか。僕はもう何度目かも分からない弾幕との対面をしながら、必死に思考を回転させた。  魔理沙さんの弾幕を経験した宗一郎はどうしていたか。……ああ、きっと何も考えないで叩き落としてたんだろうなぁ。  なら、この前フランドールの弾幕を僕は体験したじゃないか。あの時はどうしていたんだっけ。  確かちょっとしたことで、その弾の特性を知ることができた──。     「あぁ、そうか」      この弾幕の特性を理解すること。それが逃げ切ることの第一歩じゃないか!  いくらその弾数が多くても、一つ一つの動きは不規則でも、きっとその中に規則性が存在するはずだ。  何せ、スペルカードには幾つかの種類がある。規則性に則り弾幕を創るからこそ、そこに種類が生まれるはず──     「──ってげふっ!」      みぞおちに弾がめり込んだ。  前方不注意の為せる技……。      ともかく、こんなに早く攻略の糸口を発見できたなんて、今日の僕は頭の回転が早い!  なぜだか気分が高鳴っている。        自分で気付いて驚いた。   この状況を楽しんでいる自分がいることに。
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