四譚 変容

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      「まぁ語弊ね。一つ良いヒントを言うと、弾幕はずっと同じペースじゃないわ」   「……ん」      のんびり問答をしているように思えるが、僕は全力疾走中。弾を避けながら話をして、突破口を探さないといけない。苦行も苦行、息はとっくに切れ切れだ。脳に酸素を行き渡らせるため、無理矢理大きく息を吸い込んだ。短いスパンで吐き出される息が、事態の緊迫さを雄弁に語る。  僕の呼吸は走り続けることで段々そのスパンも速く、短く。走ることを止めれば、緩やかに、ゆっくり。急に走り出せば、急に速く。静から動へ、移行が唐突であればあるほど負担は大きい。  もしかすると、この弾幕も、そうなのかも?  延々と流れ続けるこの弾幕のサイクル、実は一瞬の隙間がある。まるで、映画のフィルムが切れて巻き戻すかのように、それに要する時間は少なくとも、確かにある。  そこに意識を向けると、映画のフィルムの例えは実に的を得ていることに気付いた。巻き戻されたフィルムが同じ映像を繰り返すように、弾幕も、同じサイクルを繰り返しているだけなのかもしれない。     「やっぱり今日の僕、なんか冴えてるかも」   「ふぅん」   「あ、信じてない」   「"真実の月"の効力下だもの、誰でもそうなるわ。ただあなたがちょっと顕著なだけ」
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