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輝夜さんの言葉を理解しようとするより、この弾幕を理解することの方が優先だ。
僕はなんとか弾の軌道を予測しながら避けながら、全体の動きを必死に瞳に映していた。
「直接僕を追っかけてくるわけじゃないよな──あぶなっ。
同じ動きをしている弾もあんまりないし──うわぁっ。
うーむ……っとぉ」
足下を襲った弾を、ジャンプして避ける。
考え事をしながら必死に避け続けた後、一瞬だが──空間を埋め尽くすかのように舞っていた弾幕が、完全に姿を消す瞬間があった。
「んっ!」
スペルカードクリアか、一瞬そう思ったものの、どうやらただの次弾装填のための空白だったらしい。
そう甘くはないか、と溜息を吐く。また、弾幕を理解する作業に入る。
弾幕を突破するためには弾幕を理解して、その隙間を縫っていかないと……ってちょっと待て。
もしも、さっきの空白が"一定の間隔でやってくるのだとしたら"。
その一瞬、そこに潜り込めばいいんじゃないか?
いや、だが本当に一瞬だった。瞬き一つと差異無いほどに。その間に僕と彼女の間に隔たっている距離を詰めなければならない、それは物理学的に考えて不可能だった。
不可能を模索したって仕方ない。いくら非科学的な現象に立ち向かうとしても、その僕自身は科学の枠から出ることなどできないわけだし。
また、同じように問題解決ルーチンに沿って糸口を──見つけ出そうとした時だった。
「──っ!?」
鼓膜を激しく叩く破裂音。思わず音の方向に視線を向けた。
それを視認するより先に、衝撃に付した爆風が叩き付けられる。髪が、服が舞い上げられた。
僕は腕で風よけを作りながら、細めた目を上空へと向けた。
月を背に空に浮かぶ一つの影。
そのシルエットは、巫女装束を纏った少女の形をしていた。
「やっと見つけたわ……叶」
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