451人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
◆---
そして、
どうしてこうなってしまったのだろう。
「……ぐぅっ!」
華奢な体が、まるで投じられた飛礫のように吹き飛び、地面に叩き付けられては慣性に従い転げ回った。
砂煙を巻き上げながらようやく止まったものの、その額には流れる赤い雫が線を曳いていた。
そしてそれを冷たく見下ろす、危害者。
ただ唇だけが動き、
「──脆弱」
無感情に告げられた。
そして間髪入れる様子も無く、すっと向けられた掌からは新たな光弾が放たれた。
この状況は予想していたことではあった。
だけど意図せず、その予想はどこまでも浅はかな楽観視によって出来ていた。どうせ、最後には冗談っぽく終わるのだ。それ以外の結末など思い得なかった。
現実はこうだ。
満身創痍の霊夢さんは辛うじて立っているものの、素人目にも、見上げる格好になっている輝夜さんとの力量差は歴然としている。
見るだけでも痛々しい傷を全身に負った霊夢さんは、それでも後退することを良しとしなかった。立ち向かっているのだ。
……僕はただ、その圧倒的な世界に混乱していた。
「……れ、霊夢さ──」
「輝夜。さっさとその物騒な月を仕舞いなさいよ」
言葉を阻まれる。もはや言葉の干渉すらも許されなかった。
「貴女に指図される覚えなど無いわ。私の難題に水を差すことがどれだけ愚かしい行為なのか、まだ分かっていないようね」
「うるさい。叶にそんな危ない真似、させられるわけないでしょ」
目まぐるしく二転三転する状況の中にあって、僕は一つだけ絶対と確信できる事実を悟っていた。
なんと揶揄されようとも、それすら分からない程、僕は馬鹿じゃない。
理解できないわけがないじゃないか。
僕のせいで、霊夢さんが傷ついているんだから。
最初のコメントを投稿しよう!