四譚 変容

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  ◆---       そして、  どうしてこうなってしまったのだろう。   「……ぐぅっ!」    華奢な体が、まるで投じられた飛礫のように吹き飛び、地面に叩き付けられては慣性に従い転げ回った。  砂煙を巻き上げながらようやく止まったものの、その額には流れる赤い雫が線を曳いていた。  そしてそれを冷たく見下ろす、危害者。  ただ唇だけが動き、   「──脆弱」    無感情に告げられた。  そして間髪入れる様子も無く、すっと向けられた掌からは新たな光弾が放たれた。    この状況は予想していたことではあった。  だけど意図せず、その予想はどこまでも浅はかな楽観視によって出来ていた。どうせ、最後には冗談っぽく終わるのだ。それ以外の結末など思い得なかった。  現実はこうだ。  満身創痍の霊夢さんは辛うじて立っているものの、素人目にも、見上げる格好になっている輝夜さんとの力量差は歴然としている。  見るだけでも痛々しい傷を全身に負った霊夢さんは、それでも後退することを良しとしなかった。立ち向かっているのだ。  ……僕はただ、その圧倒的な世界に混乱していた。   「……れ、霊夢さ──」 「輝夜。さっさとその物騒な月を仕舞いなさいよ」    言葉を阻まれる。もはや言葉の干渉すらも許されなかった。   「貴女に指図される覚えなど無いわ。私の難題に水を差すことがどれだけ愚かしい行為なのか、まだ分かっていないようね」 「うるさい。叶にそんな危ない真似、させられるわけないでしょ」    目まぐるしく二転三転する状況の中にあって、僕は一つだけ絶対と確信できる事実を悟っていた。  なんと揶揄されようとも、それすら分からない程、僕は馬鹿じゃない。  理解できないわけがないじゃないか。      僕のせいで、霊夢さんが傷ついているんだから。
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