一譚 希望の果て

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  「席は渡良瀬の後ろならギリギリ机入るか。休み時間の内に倉庫から二つ、持ってきてくれ」 「……え? あ、はい」  少し、その吸い込まれるような綺麗な瞳に見入っていた。  濁りがない。化粧はもちろん繕ってもいない。彼女のありのままの姿が言葉にできない魅力となり、思わず見とれてしまった。  いやちょっと待て。先生、なんと仰いました? 「ぼ、僕の後ろですか!?」 「なんだ、嫌なのか?」 「え、いや……ゴンザレスさんたちがいいんならいいですけど……」 「問題ないだろう? 田中、ゴンザレス」 「……」  静寂。二人はまるで他人事のようにそしらぬ様子だ。シカトなのか、無視なのか。いや、違った。  田中さん、つまり金髪少女が何かに気付いたかのように手を叩いた。頭上に電球が見えた気がした。 「あぁ、田中って私のこと──ごふっ」 「あはは、なんでもないですよー」  ゴンザレスさんの拳が一瞬、ブレたように見えた。僕の動体視力じゃその程度にしか映らなかったが、このクラスで唯一その顛末を見届けることができたであろう宗一郎はかなり引きつった顔で苦笑いしていた。つまり、相当ヤバいってこと。  笑顔のゴンザレスもとい巫女少女。腹を押さえて呻いている田中じゃなくて、金髪少女。  絶対偽名でしょ、とは言えない。  呻る金髪少女を横目に、巫女少女は担任の問いににこやかな表情を以て了承の意を示した。 □  
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