四譚 変容

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     昔、街の不良に絡まれたことがあった。  僕の前方不注意でぶつかってしまったのだ。過失は僕にあった。  ──そして僕を庇った宗一郎は、10人近くもの不良を相手にケンカし、大事なその腕を折る大怪我をした。    剣道部のエースであり将来をも嘱望された、誰にでも頼られる優しい親友を、  少しの間とはいえ、大好きな剣道が出来ない体にしてしまったのは。  他ならぬ僕だった。       変わらないのか。あの頃から少しも。今の霊夢さんの姿が、昔の宗一郎の姿とそのまま被る。  僕は何も変わっていない。弱いまま、無力なまま、守られ、隠れて、逃げて、その代わりに誰かが傷つく。  そうして生きてきた。  僕は傷つかなかった。それを誰かに押しつけていたから。  それは僕の弱さだ。  僕の無責任な弱さが誰かを傷つける。    後悔と自責が、常に背中に張り付いていた。振り返ることはしなかった。あることを知っていて尚、知らぬふりをしていた。  全て、僕が弱かったからだ。      変わりたい。  清算したい。  強くなりたい。  何のために──?      視界が開けた。      単純明快だ。  答えはこんなにも、近くにあったんだ。  それは、なぜなら。      僕の願いの本質だ。  僕の望みの本質だ。  僕の──希望だ。         「みんなと笑って過ごすために」
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