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昔、街の不良に絡まれたことがあった。
僕の前方不注意でぶつかってしまったのだ。過失は僕にあった。
──そして僕を庇った宗一郎は、10人近くもの不良を相手にケンカし、大事なその腕を折る大怪我をした。
剣道部のエースであり将来をも嘱望された、誰にでも頼られる優しい親友を、
少しの間とはいえ、大好きな剣道が出来ない体にしてしまったのは。
他ならぬ僕だった。
変わらないのか。あの頃から少しも。今の霊夢さんの姿が、昔の宗一郎の姿とそのまま被る。
僕は何も変わっていない。弱いまま、無力なまま、守られ、隠れて、逃げて、その代わりに誰かが傷つく。
そうして生きてきた。
僕は傷つかなかった。それを誰かに押しつけていたから。
それは僕の弱さだ。
僕の無責任な弱さが誰かを傷つける。
後悔と自責が、常に背中に張り付いていた。振り返ることはしなかった。あることを知っていて尚、知らぬふりをしていた。
全て、僕が弱かったからだ。
変わりたい。
清算したい。
強くなりたい。
何のために──?
視界が開けた。
単純明快だ。
答えはこんなにも、近くにあったんだ。
それは、なぜなら。
僕の願いの本質だ。
僕の望みの本質だ。
僕の──希望だ。
「みんなと笑って過ごすために」
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