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狙いは、たった一瞬。もうごちゃごちゃ考えるのは止める。一つの突破口に全身全霊を尽くすだけだ。勝負はたった一度。それ以上の戦いに意味はない。
「行っちゃっても、いいのよね?」
輝夜さん典雅な月を背に、妖艶な笑みを浮かべながら言う。
僕は黙って頷いた。緊張と、高揚が込み上げる。
後ろで霊夢さんが息を飲む微かな音も拾えるほどに、聴覚を含めた全身の感覚が鋭くなっていた。どうやら、手出しせずにいてくれるらしい。
そして輝夜さんが、その名を紡ぐ。
「行くわよ」
────永夜返し
再び始まった光の舞踏。圧倒と排斥の乱舞。華美にして流麗、そして強力無比。
しかし心なしか、幾百にも及ぶ光の弾の軌道が、僕には先ほどよりもはっきりと視認することができているような気がした。
回避に次ぐ回避。弾の軌道から自らの体をなんとか逃がすことに専念。
そしてその間になんとか、輝夜さんに肉薄していく。たった一歩でもいい、チャンスまでに、少しでも輝夜さんに近づいておきたかった。
回避しながら前進するのは思いの外、難度が高かった。忙しなく動き回りながら、なんとか弾の道を推し量り、少しでも前進していく。
危うい所も多かったが、ようやく見当の付けていた時間──チャンスが訪れる。
1と2の間隙。
次弾の装填に伴う、僅かなスキが生まれる刹那の間。
一縷のチャンス、これを逃すことは許されない──!
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