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「おおおおおおおっ!」
弾幕の切れ端が見えた。あそこより先には、一瞬だが完全に弾幕の存在しない無防備な空間がある。そこにしか勝利への道はない。
弾幕は未だやや尾を引いているものの、切れ端に向かうにつれて確実に薄くなっている。もう、突撃の許容範囲時間だ。
雄叫び、走る。
迫る弾に向かう僕。これまでとは比べものにならない弾幕の体感速度に顔をしかめながらも、トップギアを維持。
強い意志を燃料に。僕はただひたすら、走る──
「っ!!」
かつて無いほどに研ぎ澄まされた感性によって、僕は悟った。
──届かない……!
だからどうした、とか、それでも、とか、そんな感情論を置き去りにして、一つの否定的事実が投影される、抗えない現実を予見した。
輝夜さんが次弾の装填を終え、再び手を振りかざす。
僕は走ったままだ。
次弾が射出された時、回避は不可能。
諸刃の捨て身は失敗に終わったことをむざむざと教えられた。
だからどうした。
どうにもできないなら、どうにかできるようにするさ。
僕の体に"異変"が起きたのは次の瞬間だった。
まるで革命。
まるで覚醒。
まるで孵化。
まるで──羽化。
僕の背中から、幾数枚の白い"羽根"を散らしながら、
僕の意志を形にしたかのように、強く──
──翼が、羽ばたいた。
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