五譚 軋轢

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□      宗一郎を起こさないように、慣れない忍び足で部屋を出た。  部屋を出る直前にデジタル時計を見たが、信じられないことに日にちが一日早まっていた。時計の故障じゃなく、僕が一日中寝ていたと推理することは簡単だった。すっかり覚醒したことで、意識を失うまでの記憶も戻ったことに因る。  ともかく、さしたる問題じゃないな、ということで階段を下りた。学生で言うところの休養日のうちの一日が無くなってしまったことは名残惜しかったけど。  つまり学校がないので、こんな朝早くに起きる理由はない。まだ時計は6時にもなっていなかった。  だけど黙っていられなくて、僕は玄関のドアを開いた。      予想通り、かなり寒い。  顔や手といった肌が露出しているところを狙っているように、じんじんと寒い。  翼も同様に寒さを感じるところを見るに、どうやらしっかり神経は通っているみたいだ。      外出は得策じゃないな、と思ったので、家の壁をなぞるように歩いて、裏庭へ行くことにした。  寒さを耐えるには軽装すぎたので、翼ですっぽりと体全体を包むことにした。
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