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瞬きの間に、景色がすり替わる。
家の庭にいたはずなのに、目の前の景色が原型を残すところなく一変していた。
360度、毒々しいピンクの色をした世界。至る所に、さっき見た無感情な目が散らばっている。
生理的嫌悪感を掻き立てられ、吐き気と悪寒が走った。
「ようこそ」
さっきと同じ声が、今度ははっきり聞こえた。僕は弾かれるようにその方向を向いた。
飛び込んできたのは少女のシルエット。白の洋装。ウェーブのかかった金色の髪。ネグリジェのような帽子。掲げられた日傘。口元を隠す扇子。
長い睫毛が瞬き、浮かべるは妖艶な微笑。
直後、理解した。
この人が、この世界に覆い尽くす嫌悪感の根源だと。この異質な世界の中心だと。
「あら、会った瞬間嫌われたものね」
何をないところに頬杖を付いて、覗き込むように僕を見る。
そうだ、思えば足場もない。ふわふわとした無重力感が気味悪さを助長しているのだ。
負の感情でない交ぜになった僕の頭は、この疑問のどこから問えばいけばいいのか分からず、ただ呆然と立ちつくすだけだった。
「まぁ、いいわ。歓迎こそすれ、あなたは客人であることに違いはない。むしろこちらは謝罪する側なわけだし」
「ど、どういうこと……?」
その人は、頬杖を解いて、真っ直ぐ僕を見た。
「幻想郷の代弁者として、謝罪するわ」
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