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自分の叫び声がいつまでも耳に残る。叫びすぎて喉が痛い。それでも憤りはちっとも収まっていない。
沈黙を保っていた女性が、ようやく口を開いた。
「謝罪するわ」
事務的に、彼女は告げた。
その言葉の抑揚の無さは、誠意の薄さの裏返しのように感じた。
さきほどまでの嘲笑的な意図は感じないが、どことなく気圧されているような感覚に苛立つ。
でも、この人が僕に何かしたわけじゃない。このワケが分からないモノが生えた原因でもない。
なのに、感情の赴くままに怒りをぶつけるのは理不尽だ。
頭では分かっているのに、怒りを押し込めることが出来なかった。
僕はこんなに自制心の無い人間だったか。
いや、仕方ない。僕は悪くない。悪いのは──
──悪いのって誰さ?
それが分からないから苛立ってるんじゃないのか。
早く押しつける相手が欲しい。
苛立ちをぶつける相手が欲しい。
それはエゴか?
誰かに押しつけるのはお門違いか?
いや、僕が被害者だ。悪はどこかで僕を嘲笑ってる。
「……くそっ」
黒々とした感情に対しての、舌打ち。僕ってこんな人間だったのか。
これが生えて僕はおかしくなったのか。それとも、"普通"という自衛の殻を失った今の僕が、僕の本質だとでも言うのか。
いや、それとも──
もう僕は、
僕でなくなってしまった?
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