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「──っ!」
動悸が早くなり、苦しいほどに呼吸が荒れていたことに気付いたのは、頬を伝う雫の感触を感じたあとだった。
「あ、あぁ……」
嗚咽が漏れる。
不透明だった不安が、今はっきりとその鋭い輪郭を浮かび上がらせて、僕を飲み込んでいた。
この背中に生えた歪で気味の悪いモノは、僕を××××にしていく。僕を僕でない誰かに、他の誰とも違う、恐ろしく醜い何かにしていく。
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い──。
僕が僕ではない誰かになっていくのが、怖い──。
「それがあなたの本音ね?」
「え……?」
「ごめんなさいね、少し感情の境界を操らせてもらったわ。あなたの本音を聞きたかったから」
恐怖のどん底で理解したのは、これが僕の本当の気持ちだという確証。
そうだ、こんなのは嫌だ。
僕は普通の人間でいい。平凡なただの一人の人間でいい。
バケモノじみた争いやワケの分からないいざこざなんかとは無縁の、平和で笑っていられる毎日がいい。
みんなで──。
その時、霊夢さんと魔理沙さんの姿が、瞼の裏に浮かんだ。
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