五譚 軋轢

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 脳裏に浮かんだ霊夢さんと魔理沙さんは、空を飛び、弾幕を放ち、踊るように身を翻していた。  それは紛れもなく、僕の望まない日常。  でもそれは紛れもなく、霊夢さんと魔理沙さんの本質。  霊夢さんと魔理沙さんは、僕が望むと望まざるとに関わらず戦うし、それを止めることが出来ないのは分かっている。      いや、そもそも、彼女らが戦うのは僕のせいでもあった。  護られるだけは嫌だと、僕は決意したはずだ。  それが、僕の本心であると気付いたはずだったのに。          僕と、宗一郎と、霊夢さんと、魔理沙さん。  みんなで笑い合うことと、僕が普通でありたいということは、矛盾しているのか?  どちらかしか選ぶことが出来ないとでもいうのか?     「いくら考えようとも、結果は同じよ」   「……っ」     頭の中を見透かされているような言葉に、はっとなって思考を止める。  ごたごた考えても現実は何も変わらないからすぐに結論を出せ、ということだろうか。無駄だ、と言うのだろうか。     「いずれ"なかったこと"になるのなら、如何なる問答にも意味はない、ということ。結果は変わらない。運命は不動にして既に決している」   「え?」   「最後の挨拶くらい、してらっしゃいな」    僕の双眸以外の全ての目が閉じる一瞬前、彼女の表情に僅かだけど、翳りがあったように見えた。       □
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