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遠くで音が聞こえる。
「ん……」
ゆるやかな覚醒だ。
夢の残滓が、悲しげに頭の隅で揺らめいていた。どんな夢かは思い出せないけれど、どうしようもなく悲しい、寂しい夢だった。
床に転がっていた宗一郎を起こして、登校の準備をする。
適当にパンをかじっていると、やがて霊夢さんと魔理沙さんがやってきて、同じテーブルに着く。パンを差し出すと、眠たげな目をこすりながら、もそもそとかじり始めた。
適当に準備を済ませ、ちょっと余裕を持って家を出る。
宗一郎が竹刀を取りに行きたいというので天谷の家に寄って、四人で歩き出す。行きずりの話のネタは専ら、僕弄りに終始した。まったく勘弁して欲しい。
授業を受けて、お昼を食べて、教室で喋って、放課後。宗一郎とは部活だと言って別れる。
僕らは三人でゆっくりと歩きながら帰路に着く。
やがて宗一郎が僕の家にやってきて、また四人で喋り遊ぶ。
宗一郎がボケる。霊夢さんが突っ込む。魔理沙さんが乗っかる。何故か僕が罵られる。まったく勘弁して欲しい。
やがて遊び疲れた僕らは、各々の寝床で眠りにつく。
ありふれた当たり前の一日を無事に終える、その少し、前。
僕はふと、──そう、まさになんの脈絡もなしに、更に言うと、ほんの一瞬だが、
この"普通"を愛おしく思うのだった。
なんともない一日の風景。
僕もみんなもずっと笑っている。掛け値も裏表も屈託もない、丸裸の笑顔が溢れている。
そんな毎日が、ずっとずっと続くと思っていた、いや、思うまでもなく、そうであるのが当然だった、はずだった。
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