一譚 希望の果て

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   今は昼休み、場所は屋上。ふだんは生徒に開放されていないはずのこの場所になんで僕たちがいるのか。  もちろん自発的に来たわけじゃない。抗えない強制だ。 『屋上にて待つ』  それは、今からお昼ご飯にしようとした時に机の中から見つけた紙切れに書いてあったことだ。  普通なら誰かのイタズラか、もしくは告白かなんかじゃないかと心を弾ませているところだけど状況が状況だ。それが誰からのもので、なんの目的が込められているのかと想像するのは簡単だった。  簡単だったけど認めたくなかったのが本音である。  と、言うのも。  授業中背後から感じた気配がヤバかった。僕でも分かるくらいガン見されてた。必ず机に突っ伏しているはずの宗一郎ですら起きていたし。紙切れを見た時、行かなきゃ殺されるんじゃないかなとすら思ってしまうほど。もちろん、行ったら行った出どっちにしろ殺されるとは思ってなかったけど、どうやら笑えないことにその可能性も捨てきれないみたいだ。 「ほどほどにやんなさいよ」 「え、わたしがやるのか?」 「どうにも乗り気になれないから、パス」 「その意見には賛成だが…… ま、いっか」  その元凶たちと言えば、既に戦闘モード入っちゃってるし。 「さて、構えろ叶」  と、宗一郎。その手には鉄パイプ。って、鉄パイプ!?  いくら相手が武器持ってるからって、宗一郎の鉄パイプは凶器以外の何物でもない。素人が振り回すそれより遥かに恐ろしい武器だ。  その手に持つ物が竹刀でも、防具を付けていてもとんでもなく痛いのだから(体験談)、ましてや相手は…… 「お、女の子だよ!?」 「問答無用! 俺が男女差別しない主義なのは知っているだろう!」 「おぉ、それには賛成だぜ」 「そういう問題じゃないから!」  二人の間に割って入る。そんなこと、許されていいわけない。  そんな僕の行動に不満そうな表情を見せた宗一郎だったが、声は意外にも後ろから飛んできた。 「話し合う気はさらさら無いんだけどね。そっちの大男はどうだか知らないけど、あんたはひ弱そうだからできれば手荒な真似はしたくないんだけど」  ……初対面なのにもかかわらず、えらい言われようだなぁ。  
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