451人が本棚に入れています
本棚に追加
「何をしているのか、だって?」
嵐のような敵意を正面から受け止め、魔理沙さんが言った。僕からはその表情は窺えないが、おそらく、さも楽しそうに笑みを浮かべているのだろうと思う。
「そんな野暮ったいこと聞くなよなぁ」
魔理沙さんは頭を掻いた。そのまま帽子の中に手を突っ込んで、スペルカードを抜き放つ。
文さんの嵐に共鳴するように、甲高い金属音のような音が響き始めた。音源は探るべくもない。それはまるで、二人の戦気が音になって僕の全身を叩いているようでもあった。
ただの傍観者であろうと、立ち会う者の肌を粟立たせる。二人が今にも飛び出しそうなのは、文字通り肌で分かった。
「そんなもの、」
魔理沙さんの周辺に星の欠片が散りばめられた。
「私の弾幕食らえば、分かるだろ!」
それらを纏い流星の如く駆け出した魔理沙さんを、僕はただ目線で追いかけることしかできなかった。
□
◆ side out
世界と世界、物質と物質、人と人、モノとモノ。それら全てを別つのはたった一枚の壁。しかしその境界は互いに不侵であるから個があり、種がある。物体の定義というやつだ。
その境界の"狭間"。言わば万物の根源であり中枢。干渉を許さないその不確定なその空間に、霊夢は誘われた。
いや、彼女に言わせるならば、
「ここなら気兼ねなく話せるでしょう、いい加減出てきなさいよ」
神出鬼没のアイツと会うために、アイツの領域に踏み込むことはむしろ好都合だった。
最初のコメントを投稿しよう!