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「言いたいことは三日三晩掃いて捨てても全然足りないくらいあるけど。あんたも忙しいんでしょ、手短にしてやるって言ってるんだから、さっさとして」
「お気遣いを感謝しましょうか」
「私が聞きたいことくらいあんたには分かってるんでしょ」
「……そうね」
珍しく紫が次の言葉を躊躇ったことに内心で驚いた霊夢だが、確信を持って、紫の底知れぬ光を湛えた目を見る。
「渡良瀬叶の体の異変。原因は少なからず私にもあるわね」
「……詳しく聞かせてもらいましょうか」
霊夢の声のトーンが少し下がった。紫に対する視線に敵意が込められる。
この不安定な空間の影響を受けているわけではないが、感情的になっているという自覚はあった。
「私が見たところ、あの子の"翼"は先天的なものではないから、あの子が妖怪の類だとかは無い。人間であることは間違いない」
「そりゃ、私が気付かないわけがないしね」
「ここからは推測も入るのだけど──」
紫もまた少し溜めてから、言った。
「悪魔の妹との弾幕ごっこ、幽々子や妖夢との接触、そして、"真実の月"と輝夜の影響を長く受け続けてしまったことが原因と考えるのが、一番すんなりよね」
「私も、そう思ってたところだけど」
霊夢は腕を組んだ。確かにそう考えることが自然だ。妖怪や強大な"力"に晒されたことで、力の持たない人間が何かしらの影響を受けることはごく稀にあることだ。偶然そうなってしまったと解釈すれば不自然なことはない。
しかし、霊夢は思考の隅で存在感を放つ違和感を意識せずにはいられなかった。軽視できない問題だからこそ、尚のこと違和感から目を逸らせない。が、いつまでも言葉にできないそれに構うより、問題の結果の先を考える方が優先だった。
霊夢は切り口を紫に渡した。
「……で?」
「私なら元通りにすることが容易なのは分かると思うけど」
「でしょうね」
「それをするということがどういうことなのかも、分かっているでしょう?」
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