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見たくもない彼女らの決闘は佳境に至っていた。
見届けなければならないという責任感を通り越し、ひたすらに目を背けて逃避に走る。それがどれだけ彼女らに失礼なことで、無責任なことかは分かっていた。それでも、僕は彼女らの戦いを見ようとはしなかった。
例え僕がどう思おうとも、僕には何も出来ないから。
魔理沙さんはそんな僕を咎めることをしなかった。僕はそれに甘えていた。
「ふいー、どうした文。いつものキレが全然だぜ」
「はぁ、あなたがマジモードすぎるんですよ、魔理沙さん」
耳に入ってくる言葉を理解するに、魔理沙さんは相当本気で戦っているらしかった。胸の中を棘で刺された気分になる。
どうしてそこまでして戦うのだろう。戦ったって痛い思いをするだけだ。誰も喜ばない。戦う意味が分からない。
意図せず、僕の気持ちを文さんが代弁していた。
「どうしてそこまで本気になれるんですか? 何の関わりもない赤の他人ですよ?」
……やめてよ、聞きたくない。
魔理沙さんの口が開くのを見たくなくて、僕は逸らしたままの視線を動かせない。なのに、耳を塞ごうとはしなかった。出来なかった。
文さんの、ひいては僕の問いを、魔理沙さんは飄々とした声色で答えた。
「おいおい、なんのための弾幕ごっこだよ。それを相手に見せつけるための、スペルカードだろ?」
「まぁ、そうですけど」
それは答えには漠然すぎたが、文さんは何かを悟ったのか、少しだけ声に楽しげな色が含まれていた。
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