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「ぼ、僕は他の人に昨日のことを言う気はないよ?」
「じゃぁ、隣のそいつについて説明してもらおうかしらね」
「…………やっちまったね」
今ここにいる宗一郎が何よりの証明で、僕の交渉は最初から破綻していた。
皮肉なことに、僕は宗一郎を巻き込んで更に自分を危険な状態に追い込んだわけだ。
項垂れるも、言い訳のしようもない。
でも、今のやりとりで分かった。
二人は、昨日の出来事の口封じにやってきたんだ。それも、実力行使で。
「まぁいいじゃないか、そんなこと」
「魔理沙?」
にかにかと笑みを浮かべながら一歩踏み出す金髪少女。
巫女少女が訝しむも、魔理沙と呼ばれた金髪少女は僕らに対し箒を構えることで答えた。
「喋れないようにするだけだぜ」
あからさまな戦意のベクトルは箒の矛先というリアルな武器で形となって僕へ。身のすくむ思いは、人生でもそう経験のない恐怖。
そんな僕より先に、宗一郎が反応した。
「ほー。やれるものならやってみろ」
「ちょ、キレちゃ駄目だよ宗一郎!」
「悪い、ちょっと退いててくれ」
言いつつ片手で僕を脇に押し込む宗一郎。うぅ、止めるために間に割って入ったはずなのに、ここまであっさりと退場させられるとは。
でも相手は女の子だし、宗一郎みたいなのが武器持って襲いかかってきたら『普通』逃げるよね。
「手出し無用だぜ」
そういう魔理沙さんの手には、目映いまでに光り輝く黒い紙切れが握られていた。
この時僕は、二人が全然『普通』ではないことを忘れていたのである。
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