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逸らし続けていた視界の端っこの方で、文さんらしき物体が煙を上げて墜落していくのが見えた。
どうやらいつの間にか魔理沙さんが勝利していたらしい。
文さんなら無事だろう、と勝手に自己完結しつつ、僕は、視線を魔理沙さんへ向けた。今度は淀みなく、迷いなく。魔理沙さんと目があう。すると魔理沙さんは、先ほどの羞恥もどこへやら、いつもの、にっ、とした爽やかな笑みを浮かべてVサインしてみせた。くっ、と堪えられず吹き出して、僕もVサインで応えた。
そこで魔理沙さんへ歩み寄ろうとして、気付いた。
地に足が着いていない。
「!? !? !?」
足が着くべき大地は遥か下方。眼下に見える深緑色のこぢんまりとした物体はおそらく木だろう。どこまで高く"飛んで"いるのかはそれで推し量れた。けど、
「う、うそおおお!?」
そもそもなんで飛んでるのさ!
翼はあるけどそんな簡単に飛べるものなのか。いやそもそも僕は翼で羽ばたいていない。浮力なんてどこにもないはずなのに何故か僕は飛んでいる。重力がサボっているしか考えられない。理解の蚊帳を突き抜けて遠く彼方。もうワケが分からなかった。
「ま、魔理沙さん、た、た、タスケ──」
僕の必死の命乞い虚しく、
「わあああああ…………」
力を込めれば沈んでいく水中と同じ道理で、僕は急転直下、落下していった。
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