451人が本棚に入れています
本棚に追加
むすっとする魔理沙さんの奥から、笑い声が聞こえてきた。林の中から現れたのは、
「あ、霊夢さん」
「ん、おはよう。面白いコントやってるじゃない、ふふっ」
それを聞いた魔理沙さんはまたふくれたが、それを見た霊夢さんはまた愉快そうにくつくつと笑った。
相変わらずの奔放な振る舞いとあけすけな笑顔は、普段より霊夢さんを霊夢さんらしく見せていた。何か良いことでもあったのか、機嫌がよさそうだ。比例して魔理沙さんの機嫌が悪くなっていくが。
「なにか良いことでもあったの?」
「んーん。むしろ良くないことだらけよ」
「えぇ!?」
ここまで機嫌の良さそうな霊夢さんもなかなかお目にかかれないのに、当の本人はバッドニュースを主張した。
良くないことが起きると機嫌が良くなるのだろうか。
「それじゃ、一つ真面目な話。叶の正直な気持ちを聞きたいから、真剣に考えて応えてね」
いきなり現れてそんなことを言われても。と、言ったら睨まれそうだから口では言わないけど。
改めて向き直った霊夢さんの顔は、先ほどの"らしい"笑顔の代わりに、凛と締まっていた。笑顔が影を潜めた顔が"らしくない"と思ったのは、その表情に少しだけ翳りが見えるからだろうか。
これは本当に真面目な話のようだった。
雰囲気を察したのか、むくれていた魔理沙さんが慌てて霊夢さんと僕の間に割って入った。
「お、おい霊夢、それがどういうことか分かってんのか!?」
「さっきまでの決闘は確かにあんたの意志を貫くためのものだったけど、これはワケが違うのよ。引っ込んでないと封印するわよ」
強制退場を促す鶴の一声。魔理沙さんは一瞬だけ抗議の声を上げたが、渋い顔をして引き下がった。
これは相当に、真面目な話だ。翼がむずむずする。
最初のコメントを投稿しよう!