五譚 軋轢

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  「そんなの、最初から決まっていたじゃないか」      魔理沙さんが照らしてくれた。霊夢さんが示してくれた。宗一郎が支えてくれた。  応えないわけにはいかない。  だってそれは、僕の望みでもあるのだから。     「その提案を断るよ」   「でも、それじゃ叶は──!」   「それでみんなといられなくなるなら、意味ないよ」      霊夢さんと魔理沙さんが、同時に息を飲んだ。なんとなく、なんとなくだけど、分かっていたんだ。この翼を消すということは、二人と別れるということなのだと。       「叶……」   「というわけだから、これからもよろしくね」                それまで僕を守っていた"普通"と離ればなれになることは、それなりに勇気のいることだった。決断した今でも、これから先後悔しないのか、疑問に思う。  でも、全部が欲しいとは言っていられないから。  僕がこの翼のせいで不安になっても、みんながいてくれるのなら。  そして、誰かが不安になったり、悲しい思いをしている時に、この翼で助けてあげられたら。  それは素晴らしいことじゃないかな。      なんて、そう思うんだ。     □
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