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「……ただいまー」
自宅の扉を開けてから、数瞬躊躇って声を放った。玄関の靴を見ると、やはり宗一郎はまだ家にいる。
霊夢さんと魔理沙さんにはケジメを付けた。あとは宗一郎だ。
でもいざとなるとやっぱり二の足を踏んでしまう。つくづく損な性格に生まれたものだ。もっとサバサバと生きれたら楽だろうになぁ、とは常々思う。思うだけだが。
家の中から返事はない。まさかまだ寝ているのだろうか。もう夕方に差し掛かっているような時間帯なのに。振り返って僕の後ろにいた霊夢さんと魔理沙さんを見る。やっぱり行かなきゃだめですか。当然だ早く行け。無言でそんなやりとりが交わされた。
仕方がない、と重い靴を脱ぎ捨て、小さくぼそりとただいまと漏らしながら家に入った。昇るたびに軋む階段の音がうるさい。木目の廊下がやけに長い。ドアノブに伸ばした手が鈍い。仕方がないと言いつつ未練たらたらじゃないか。
ドアノブに手を掛け、捻る前に一旦停止。ちょっとだけでいいから考えさせて。
なぜこうも僕がたたらを踏んでいるかというと。
一番身近な人に否定されるのって、最悪じゃない?
宗一郎のことは信頼しているけど、それとは別でやっぱり躊躇してしまう。
もしも否定されたら……と思うと。この否定は僕の存在全否定と同じだ。それほど恐ろしいことはない。
背中からの視線が痛い。痛い痛い突き刺さってるよ何か物理的に。叩くのもヤメテ。
分かってる、進まなきゃいけないことは。でももうちょっと……って本当に痛いんだけど叩きすぎじゃない?
ええい、ままよ……。
100%やけっぱちで、ドアノブを捻った瞬間、
「痛い!!?」
開けようとしたドアが、勢いよく僕に襲いかかった。顔面直撃。目の前で火花散る。
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