一譚 希望の果て

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   魔法少女が指で挟んだカードを天高く掲げる。目も眩む閃光を放っていたそれの元、彼女は不敵に笑って言うのだった。 「全部当たっても死なないくらいの威力だけどな。 ……当たると、それなりに痛いぜ」 「死ぬくらい痛いのか」 「まぁ、違いない」  まるで緊張感のない対話だが、僕の目視によると宗一郎はとても大変なことになっている。  散在する数多の星の形が動き始めた。数百、いやそれ以上かもしれないそれが、僕と宗一郎の間を壁のように別つ。  そしてそれらは一つ一つが自我を得たかのように、独立して運動を始めていた。もし、まるで流星群の如きあれが一斉に襲いかかってきたらどうなるかと考えた時、僕の緊張は飽和点に達した。  群れる流星が描くのは弧。渦巻くように動き回り、宗一郎から移動の余裕を少しずつ、途方もない威圧感を与えながら奪っていった。  しかし、その中心に立つ宗一郎は今は微動だにせずに佇んでいる。  正眼で構えた鉄パイプ。宗一郎に持たせれば無双の武器であると信じたいそれだが、この非現実を目の当たりにした今、それでさえも無力に思える。  そんな僕の不安を加速させる、金髪少女の声が高らかに響き渡った。 「さーて、いくぜ!」  振り上げた右手と連動するように星の動きが激しくなった。  ヒュンヒュンと風を切りながら空を舞い──その一つが、宗一郎に襲いかかった。 「危ないっ!}  無様にも狼狽え、情けない声を上げることしかできない。  何せあの軌道、あの速度、動く気配のない宗一郎。悪い予感が脳裏を過ぎったのだから。  頼むから、何事も起こらないで欲しい。そう思った時、宗一郎の姿が僅かに揺らめいたのが見えた。  ギィン、という耳障りな金属音に、瞑りかけた瞼を開く。  宗一郎の足下には先ほど飛来したであろう星が転がっていた。  そしていつそうしたのか、正眼で構えられていた鉄パイプは振り下ろされていた。  ほ、と息を吐く。  しかし、安堵も束の間だった。  
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