一譚 希望の果て

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   軽い衝撃を覚えてようやく、冷たいコンクリートに倒れ込んだことを悟る。 「……っ!?」  躓いたわけでもないし、足を引っかけられたわけでもない。まるで金縛りにあったかのように、まるで自分の体ではないかのように、全身に力が入らない。  一体何が起こったのか理解なんてできるわけもなく、ただ動かない体を揺らして狼狽えていた時だった。  頭上から落とされた声は巫女の人のものだ。 「あんたには絶対解けない捕縛術。少しくらい力があるのなら話は別だけどね。大人しくしてたほうがいいわよ」 「う……っ。そういうわけにもいかないよ……」  口では強がるものの、どれだけ力を込めようと力んでも四肢はピクリともしない。捕縛術がなんだっていうんだ。こうしている間にも、宗一郎が。  舞い乱れる星の弾丸を回避することなんてまるで人間業じゃない。いくら宗一郎の身体能力が人間離れしていても、だ。  そんなところに僕が行ってどうにかなるわけじゃないけど、何とかなるかもしれない。なら一刻も早く行かなきゃいけない。  頭ではそんなことを思っても、やっぱり体はまったく動かない。  宗一郎はまさに孤軍奮闘していた。多勢に無勢などおかまいなしに入り乱れる弾丸を叩き落とし、避ける。  足下に溜まっていく星の数はいざ知れず。それでも事態が良くなる気配なんて全くなかった。  しかも、遠目からも分かるくらいに弾丸の公転が描く弧が小さくなっていた。あのままだときっと、押しつぶされる。    やがて疲弊した宗一郎の背中に一筋の流星が突き刺さった。振り返りざまに叩くも、顔には明らかな苦痛が浮かんでいた。   「何やってるんだよ……僕は……」  冷たいコンクリートに為す術もなく貼り付けられた僕の体はやはり力が入る様子もなく。  そして、ゆっくりと意識が混濁していく。  抗いたい、全身で全霊で抗って、宗一郎を助けにいかないと。思いとは裏腹に、意識は沈んでいき、視界に靄がかかったようにぼんやりする。 「うぐ……」  ついに宗一郎が膝を付いた光景を目の当たりにしながら、僕は文字通り絶望の淵へ落ちていった。 □  
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