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「条件は一つ、私たちのことを誰にも言わないこと」
ぴっと突き立てた人差し指に、僕はただ首をかくかくさせて肯定の意を示した。
僕の保身のためでもあるけどそもそも否定する理由も見つからない。僕はひたすら首肯し続けた。
そんなやりとりをしていたら、寝ていた魔法少女があられもない声を出しながら瞼を開けた。
そのまま大きく伸びをして、半分だけ開いた寝ぼけ眼で状況を見渡す。
そして僕たち、特に宗一郎の方を向いて屈託のない笑みを浮かべ、ぐっと親指を突き出す。
「楽しかったぜ!」
「死ぬかと思ったがな」
即答。そりゃそうだ。ワケも分からないままあんなワケの分からないものに襲われたんだもん。僕だって同じだ。
こんなことされなくても昨日のことなんて誰にも言わないのに。
おかげで更に言えなくなった。って、これが目的なのか。よくあるヤクザさんの脅迫とかと同じか。
何やらあらぬ想像を膨らませて悶々している間に、あちら二人は盛り上がっていた。
「いやーまさか叩き落とされるとはな。しかも、あんなにでっかく啖呵切ったくせに最後はあっさり負けるし」
「……あんなファンタジーなもんにどうやって対抗しろって言うんだ」
「だから楽しかったんだ、ぜっ!」
魔法少女がなぜかハイタッチのポーズを示すと、宗一郎は渋々それに乗った。
激戦の後とは思えないくらい小気味の良い渇いた音が、赤く染まった空に木霊していった。どこかしら、互いの力を認め合った熱いライバルに見えなくもない。
ハイタッチの後、常ににかにか笑っているイメージが定着しつつある金髪魔法少女は、更にぱっと破顔させた。
「閃いた」
さっき彼女の頭上に見えた電球は目の錯覚ではないらしい。同じものが浮かんでいた。
何事か、とみんなでマリサさんの方を向く。にやりと口の端を吊り上げたその顔は、悪戯を思いついた子供のそれだ。
何やらよくない予感がした気がしたけど……それは的中した。
「監視ついでに、こいつらの家にお世話になろう」
「あぁ、それは良い考えね」
……ばんなそかな!
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