一譚 希望の果て

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   拳を握りしめてその名前を呟いたあと、少女はほぅ、と息を吐いて脱力した。 「どうも、疲れるわ」  僕はもっと疲れるけどね、とは言わない。  少女は腰を捻ってゴキゴキと関節を鳴らし、天井に向かって思い切り伸びをした。細まった瞳が疲労の程を示している。そろそろ眠たくなる時間でもあるし。  と、ここで一つ気にかかることがあって立ち上がる。 「二人の部屋の用意、してくるね」  空き部屋が一つあったはずだ。そこに布団を敷いて寝て貰えばいい。そう思ったのだが、 「? ここでもいいけど?」 「道徳人倫年齢性別的に大変よろしくないのではないでしょうか」 「ふーん……。ま、いっか」  どこか渋々な気がしたが一応の承諾を貰って僕はドアノブに手をかける。  ところがいざやろうと思えば次々に疑問が湧いてしまうのが僕の悪いタチで。 「二人は、いつまでいるの?」 「ん……」  考える仕草を見せられただけで、少しは不安を抱いた。  そして少女は、僕の不安を一字一句違えることなく口にしたのだった。 「分かんない」  ええもう、予想はしていましたとも。 □
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