二譚 遊戯

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   地面にへたり込んだまま、なかなか起きる気力が沸いてこない。  死ぬかと思った。そりゃ、本当に。  誰も起きてない早朝に、僕は一体何をしているんだ。考えると情けなくなってきた。  ……ん、誰も起きてない? 「まさか!?」  ふと頭の隅を過ぎった一つの悪い予感は無視できない程に深刻。僕の額からよくない汗が一筋垂れる。  痛む全身に鞭を打ち、家の玄関へ。  ドアノブに手をかけ、一気に回す。  ドアノブは途中で「ガチャッ」という音を上げてそれ以上回ることはなかった。 「う……」  ガチャガチャガチャと何回も試してみる。しかし、結果は何度やっても同じだった。  鍵は、もちろんない。 「……うそーん」  いつもならそろそろ昇るはずの太陽も、今は紅い霧に遮られている。  寝間着、寝癖という「いかにも」なファッションで、僕はまだお日様も昇りきっていない早朝に家から追い出されたことを悟った。  あー、紅いなー。  
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