二譚 遊戯

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   紅い世界の中心に、凛然と君臨する少女。  灰色の建造物の頂上から足を投げ出すようにしていたが、二人を確認すると「やっと来たか」と言わんばかりにくつくつと笑った。 「貴女もこっちに来てたの、霊夢」 「何をわざとらしい。あんた、今度は何をたくらんでるのよ。一人? 咲夜とかパチュリーは? というかなんでここにいるのよ。昨日の紅い月もあんたの仕業ね?」  霊夢は数々の疑問を一斉に全力投球する。これは、積もり積もったストレスを解消させるための手段でもある。  あまりの剣幕に隣の魔理沙ですら引いていた。  建造物の端から両足を宙に放り投げて所在なく揺らしていたレミリアは、その行為に飽きたかのように立ち上がった。  背格好は10歳にも満たない少女のそれだが、それを覆して余りある威圧感。紅きオーラを纏ったその姿は正にカリスマの権化。  背には蝙蝠を思わせる黒い翼。口の端から覗かせる野性的な犬歯、万物を切り裂く鋭利な爪。  どこを取っても人外と呼ぶに相応しい、しかしあまりに幼い体躯。  吸血鬼、夜の王、永遠に幼い紅き月。  レミリア・スカーレットは口を開いた。一つのため息と共に。 「質問は一」  まるで紅茶を注がれたカップに口を付けながら話しているのかと思うほどにマイペースな吸血鬼に、霊夢のボルテージが静かに上昇する。 「あんたね、この紅い霧がどんだけ危ないものか知らないわけじゃ──」 「まあまあ霊夢」 「魔理沙……」  霊夢の言葉を遮り、ずずいっと前に出る魔理沙。  かざすのは、人差し指と中指で挟んだ一枚の紙。レミリアも魔理沙が何を言おうとしているのかを察したらしく、不敵に笑うと纏う雰囲気をより硬質に、重厚なものとした。 「私たちにはもっと楽な方法があるよな。話し合いなんかよりよっぽど早くて、楽しくて、綺麗で、分かりやすい方法がさ」 「賛成。どうせ霧を止める気はないだろうし。今まで通り問答無用。実力行使。弱肉強食」  呆れの中にもどこか楽しげな声質で、霊夢は一枚の符──スペルカードを構えた。  
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