二譚 遊戯

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  □ 「はい、おはようございます。キングオブ普通の高校生こと渡良瀬叶です。色々あって全身痛いです。我らが法律国家は局地的に完全に無法地帯となっております」  二階から落ちた後、いくら呼んでも宗一郎は窓から姿を現さなかった。  おそらく再び寝たのだろう。想定の範囲内なので、それほど驚きもしなかったしショックも受けなかった。嘘です。凄く傷つきました。  学校に行こうにも、おそらく校門は僕を通すまいとその重い扉を頑なに閉ざしたまま微動だにしないだろう。  親や宗一郎が起きるにも時間がある。  そんな折り、僕は不意に昨日のあの穴が無性に気になって僕はあの山に来ていた。  ところが、あれがどこだったか詳しく覚えてないのが運の尽き。閉じたのならそれでもいいのだけど、とにかく僕はふらふらと徘徊するハメになった。  問題はここからだ。  一人の少女が木の幹に体を預けて寝息を立てているのを発見。  巨大な木の下で、まるでおとぎの国からそのまま飛び出てきたかのような幻想的な雰囲気を纏った少女が、規則正しく胸を上下させていた。  あえなく僕は混乱した。 「えー、あー、うん。なんというか……なんだろう」  なんというか、なんだろう。  たかが女の子が一人、寝ているだけだろう。  必死でうんうんと呻っていたときだった。 「わっ!」 「うわぁっ!?」  予想外の声に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。  寝ていたはずの女の子の顔が目の前にあったのだから仕方ないか。  女の子は驚いた僕の姿が面白かったのか、けらけらと笑っていた。うん、可愛い。歳は10より下だろうか。  
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