一譚 希望の果て

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   ふと気付くと、小鳥のさえずりだけが響く世界に僕はいた。  周りには緑。生い茂る草木に包まれた世界は、都会の喧噪から切り離された異界のように静かだ。  長い眠りから覚めたような、覚醒しきらない意識のまま周囲を見渡す。  なんだろう。とても悲しい夢を見ていた気がする。  悲しみの残滓が、細かい粒子となって脳内に散在していた。 「…………ま、いっか」  夢を思い返したってしょうがないや。頭をぽりぽりと掻きながら、僕は周囲を見回した。  深く息を吸う。少しひんやりとした透明感のある空気が肺を満たす。  日常生活からかけ離れた、一面緑の世界。 「……なんで僕、こんなところにいるんだろ」  そして、思い出せないのは一体どういうこと。  たぶん何か考えながら、それとも、何も考えずに足だけ動いてここまで来たんだろうか。うわ、なんかそれは嫌だ。黙々と歩き続ける少年を見て、周囲の人はどう思うだろうか。不気味だよねそりゃ。夢遊病のように見えなくもないだろう。  そんな時だった。  覚醒していく意識と共に、少しの違和感を感じた。 「なんだろ?」  本当に小さな違和感。小鳥のさえずりがちょっと減ったとか、少し物音が聞こえたとか、そんな小さなことが重なり合って。  そんな正体不明の違和感は、突如として姿を現した。 「──っ!?」  僕は身を強張らせる。耳をつんざく、不快な轟音が鳴り響いた。   
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