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ふと気付くと、小鳥のさえずりだけが響く世界に僕はいた。
周りには緑。生い茂る草木に包まれた世界は、都会の喧噪から切り離された異界のように静かだ。
長い眠りから覚めたような、覚醒しきらない意識のまま周囲を見渡す。
なんだろう。とても悲しい夢を見ていた気がする。
悲しみの残滓が、細かい粒子となって脳内に散在していた。
「…………ま、いっか」
夢を思い返したってしょうがないや。頭をぽりぽりと掻きながら、僕は周囲を見回した。
深く息を吸う。少しひんやりとした透明感のある空気が肺を満たす。
日常生活からかけ離れた、一面緑の世界。
「……なんで僕、こんなところにいるんだろ」
そして、思い出せないのは一体どういうこと。
たぶん何か考えながら、それとも、何も考えずに足だけ動いてここまで来たんだろうか。うわ、なんかそれは嫌だ。黙々と歩き続ける少年を見て、周囲の人はどう思うだろうか。不気味だよねそりゃ。夢遊病のように見えなくもないだろう。
そんな時だった。
覚醒していく意識と共に、少しの違和感を感じた。
「なんだろ?」
本当に小さな違和感。小鳥のさえずりがちょっと減ったとか、少し物音が聞こえたとか、そんな小さなことが重なり合って。
そんな正体不明の違和感は、突如として姿を現した。
「──っ!?」
僕は身を強張らせる。耳をつんざく、不快な轟音が鳴り響いた。
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