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「ふーん……」
理解したのだろうか、そう言い、少女は片足を僅かに後ろに下げた。
それはシュートの姿勢。僕も一応大人の体裁を守るため、両手を僅かに広げてシュートに構えた。
「こう、かなっ!」
不意に一陣の辻風が舞い踊ったかと思うと、鋭い風切り音が僕の頬のすぐそこを通り過ぎていった。
「…………」
ええ、その正体は分かっていました。
まるで竜巻が真っ直ぐ僕に向かってきたかのようだった。ジャイロ回転だったね。
ふと、後ろを振り返る。僕が守っていたはずの大木には、巨大なクレーターが出来ていた。
その中心、クレーターの原因となっていたモノがめり込んでいた。
摩擦熱から焦げたのだろうか。少し黒くなり、煙を上げているサッカーボールがそこにあった。
「もう笑うしかないね!」
「これでいいの?」
「よくない」
相も変わらず無邪気な笑みを浮かべる少女。
僕の方はというと至って真面目である。なにせ直撃したらとんでもなく痛いだろうから。
というかどこから来るんですかその脚力。将来有望なサッカー選手になってくれそうです。
僕はめりこんだサッカーボールをなんとか掘り起こし、少女に向かって転がした。
「ええと……さあ来い! やっぱ控えめに!」
結果としてサッカーではなく一方的なドッチボールとなったのは僕にとって不運でしかなかった。
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